失恋

3月からいろいろとやりとりをしていたバイトさんに、フラれた。
「あなたのことは友達としては好きだけど、今自分は彼氏のことが本気で好きなので、それ以外の人のことは考えられない。」とのこと。
そう、僕は、彼氏のいる女性に対して、そのことを承知で告白してしまったのだ。
細かく書く気力はないので、かいつまんで説明すると、


1 初め、彼女は彼氏がいるようには感じさせない振る舞いをしていて、事実、俺以外の職場の人に対しては、「彼氏はいません」と明言していた。
 しかし、数週間経って彼女と二人で食事をしたときに聞いたところ、「実は彼氏がいる」とのことだった。


2 彼氏がいることにショックを受けつつも、二人での食事以来、彼女は僕のことを気に入って(今思えば、「友人として」なのだ。僕は、そうではない取り方をしてしまったが)くれたようで、職場でしょっちゅう僕の席にきて話をしてくれるようになった。
 さらに、メールや対面での話の中で、彼氏について、「束縛が強い」「自分の弱い部分を認めてくれない」などと、グチを言うようになってきた。
 それを受けて僕は、てっきり彼氏とうまくいっていないものだと思い込んでしまった。そして、話の流れで「あなたに好意を持っている。あなたのことをもっと知りたい」と、半告白のようなことをやってみた。
 結果、「彼氏のことが本気で好きだから、そういう風に言われても応えられない」との返答。なんてことだ・・・「彼氏が本気で好き」なんて、このとき初めて聞いたよ!と言いたくなってしまった。


3 その後も、彼女は僕と距離を置くようなことはしなかった。今まで通り、もしくは今まで以上に、親しく接してくれる。現に、彼女とのメールや電話や対面でのやりとりを通じ、親交が深まっている実感があった。
 そして僕は、作戦を立てた。「一度フラれかけたとはいえ、まだ正式に告白はしていない。それに、彼女は僕に対して親しく接してくれる。あとは、彼氏との関係だ。『本気で好き』とはいえ、しょっちゅうケンカしているようである。ケンカして関係が不安定になっているときに、グチを聞いて、関係を深めていこう。」というものだ。
 しかし、転機は意外なところに訪れた。電話で彼女と話していると、「彼氏が、私と○○くん(僕のこと)との関係を怪しんでる。私の携帯の設定を変えて、○○くんを着信拒否設定にするみたいなんだよ」とのこと。それを聞いて、あせった。「もう電話できないかもしれない。しかも、彼氏がそこまで動き出してるとすれば、電話のみならず、他の面にも締め付けが出てくるかも。そうなると、彼女にアプローチできる機会いはもう二度とないかもしれない」という具合に。
 今考えると、拙速な判断だったのかもしれない。でもその電話のときは、真剣だった。うつで暗闇を彷徨うような経験をしてきた自分にとっては、「今」このときを後悔せずに生きることを、強く意識してしまう。そのことが効いていたのかもしれない。


とにかく、その結果、冒頭の拒絶の応答が返ってきた、というわけだ。
正直、ショック。悔しさ、無念さ、わびしさ、せつなさ、苦々しさ、、、いろんなものが一度に襲ってくる。
しかし、一方で、彼女への感謝の気持ちも、確かにある。去年の夏、前の彼女と別れて以来、ずっと絶望のどん底の日々を過ごしてきたわけだけど、その状況から僕を引き上げてくれたのが、他ならぬ彼女だからだ。
それに、彼女のおかげで、恋愛のかけひきをいろいろと学んだ。正直、今回の恋が成就しなくても、遠くない将来、彼女ができそうな、そんな自信めいた予感が抱けるようになった。これは、数ヶ月前までの自分には、微塵もなかった要素だ。


人を好きになることは、実に切ない。一方で、掛け値なしの尊さを秘めていると思う。
そんな、人生の機微に触れられただけで、今回の経験は素晴らしいものだったと言えるのかもしれない。いや、きっとそうだ。


彼女が彼氏と愛し合ってるのを想像すると、胸が締め付けられるほど切ないけどね。