葬儀
享年93歳。
心不全。
うちは両親が共働きだったこともあり、小さいころは半分ばあちゃんに育てられたような感じだった。
そのばあちゃんが、火に焼かれた。
戦争を経験し、戦後、田畑と子育てに必死に取り組み、それ以外の楽しみには脇目もふらず。自分の意思、欲求だの自己実現だのといった概念はない。ただひたすらに、与えられた自分の役割をこなす。それが人生のすべて、というような。
頭のいい人だった。学生時代はトップクラスだったようで。話をしても、頭の回転のはやさを感じさせた。それがあだになったのか、プライドの高い人でもあった。祖父ともドライな接し方。周囲にも友人はそんなにいなかったようで。
自分のことを無条件で受け入れ、愛してくれる存在が、この世からひとり、いなくなった。
恐怖−−−−−−−−−−−
親不孝でぜんぜん実家に顔をみせなかった自分。
たまに帰省すると、顔をしわくちゃにして喜んでくれた。
俺が関東に戻るときになると、何かを懇願するように、手を握り、今生の別れという感じで、送り出してくれた。
合掌。