桜が咲いてきた。
 朝、つぼみだった木が、夜、帰るときに目にすると、いつの間にか開花していた。
 人気のなくなった夜のしじまに、闇を染める淡い花びら。
 なんとも、至上の美しさを感じる。
 一人暮らしで時間の拘束なんてないんだから、好きなだけ、見ていればいいというのに、なぜか「帰らなきゃ」という無意識の思考で帰路に着いてしまう自分。
 現代の慌しさを感じる。
 美しいものは、人の心に深い癒しを与えてくれる。
 せっかく生まれてきた人生、そういうものを味わう機会を持った方がいいんじゃなかろうか。