治療への流れ考

 通院を始めて、半年が経過した。通い始めたことは、病院や、投薬に、不安、恐怖感を抱いていた。でも実際始めてみると、そんなに思ったほどではなかった。病院も、一見して普通じゃないなと感じる人もごく一握りいるけど、大方は、街中でどこででも見かけるような、普通の老若男女だ。自分と同い年位の人も来ていて、親近感を抱くこともある。
 そして、薬についてもまた然りだ。飲み始めてみると、確かに、事前の説明であったとおり、喉の渇きや、頻尿、性欲の減退を感じた。同時に、抗うつ効果も、ある程度はっきりと認識することができた。うつの大きな特徴の一つである、むなしさが、一定のレベル以内に抑えられてる気がしたのだ。自分はよく、気分を数値にして表す。そんな単純なものではないとわかっているのだが、これ以上うまく説明できる方法もまた思いつかないのだ。基準は、最悪:−100〜+100:最高、という感じだ。通院以前は、気分が、−80〜+30くらいで推移していたのが、投薬開始直後は、−30〜+10くらいになった。波の幅が狭くなったのである。思いっきりむなしくなることもなくなったし、逆に、少し気分が盛り上がる、というのも、だいぶ薄れた。
 通院から数ヶ月、心身症状の変化に合わせ、薬の種類・量を調節してきた。結果、抗うつというのは、(自分にとっては、)飲み始めは、効果をはっきりと認識することができるが、次第にその効力に慣れてくる(先生曰く「耐性ができることはありません」とのことだが)気がするのだ。なので、自分の今の気分は、−40〜+10くらいで推移している。
 そして、何より問題なのは、(あくまで、自分にとっては、)薬は気力の向上には、寄与しない、ということだ。「抗うつ剤」という名称からして、当然のことかもしれないが。先生も、「気力の改善は、うつ治療の最終段階。あせらなくていいですよ」と言っていた。で、気力については、どうなのかというと、正直、通院前より、確実に、今の方が悪い。前は、平日を中心に週に2〜3回フィットネスに行っていたのだが、今では月0〜1回。平日はフィットネスどころか、何も手につかず、仕事から帰って少しネットして、すぐ寝ている。夜はシャワーを浴びる気力もなく、翌朝浴びるありさま。休日も休日で、家でぼけーっとしてることが多い。一日どこかに出ることもあるが、そうすると、今度はその疲れが数日間抜けなくなる。そんなこんなで、だらだらした生活で運動もしてないと、体の調子が悪くなり、それに伴い、精神的にも不安定になってくる。そして、ますます運動、規則正しい生活から遠ざかる、という悪循環に陥っている気がするのだ。
 そこで、最近思うようになってきたのは、抗うつ剤は、あくまで「抗うつ」効果を期するものであり、うつ治療において過度にこれに頼るべきではないということ。自分の場合、うつの根本原因は、①不摂生による、自律神経の失調、②偏った価値観による、対人関係等のストレス、の2点だと認識している。これらが気分・気力のマイナス基調を生み出しているのである。なので、抗うつ剤によって気分面のプラス基調を与えてやっても、それは前者のマイナスを相殺しているだけだし、気力面には寄与しない。薬も、一生飲み続けるなんて避けたいところだ。なので、重視すべきは、上記①②の根本課題の解消ではないか。薬によってプラスの流れを作ってやっても、マイナスの流れを止め(減らさ)なければ、根っこは変わらない。薬も、良くないものとは思わない。回復への流れをつくる足掛かりなのだ。